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仙台地方裁判所古川支部 昭和34年(ワ)83号 判決 1961年4月24日

原告 猪股清肆 外一名

被告 国

訴訟代理人 古館清吾 外二名

主文

原告等の請求を棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

事実

原告等訴訟代理人は別紙図面斜線表示の別紙目録記載の山林が原告両名の共有であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする旨の判決を求め、その請求の原因として、右山林中中野三番六十四番は昭和二十二年一月十日原告両名が訴外菊地武夫から買受けたもの、その余の三筆は昭和十六年三月四日原告猪股が訴外越後七三郎から買受け、翌十七年二月二十三日その二分の一の持分を原告渋谷に売渡したもので、いづれも原告両名の共有に属するところ、被告はこれが所有権を争うので本訴に及ぶと述べ、被告主張の事実は争うと答えた。立証<省略>

被告指定代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として、原告主張の事実中原告等が所有権を取得した経緯は不知その余の事実は否認する。これらはいずれも被告の所有地で青森営林局中新田営林署の所管に属する国有林である。即ち明治二十五年三月関係隣地地主立会のうえ行われた官民地境界の踏査処分により官有地と認定され、明治三十六年四月に宮城大林区署長によつて行われた国有林野法に基く境界査定処分によりその官有地に編入せられ、爾来何人からも異議なく被告が経営管理して来たものである。別紙目録記載の土地は別紙図面斜線部分でなく他の場所に存在するものである。仮りに然らずとするも前記の如く他の如く境界査定行政処分があつた時は、利害関係人から法定期間内に訴願又は行政訴訟を提起し、処分取消の裁判がなく確定した場合には本来民有地たるべくして官有地に編入された区域も官有地として確定し、民有地の所有権は消滅するものと解せられる。よつて原告等は本件係争地の所有権を主張し得ぬものであると述べた。

立証<省略>

理由

成立に争のない甲第一号証によれば別紙目録記載の山林四筆が原告両名の共有に属する旨の登記の記載がある。成立に争のない乙第一号証、第二号証、乙第十一号証と鑑定人田辺健一鑑定の結果及び右検証の結果を総合すれば別紙図面斜線の部分が別紙目録記載の山林に該当することが認定できる。右認定を変更するに足る証拠はない。しからば一応原告主張の山林が原告等の共有に属するものと推定し得るものの如くである。ところが前記乙第一・二号証と証人大内一男の証言ならびに弁論の全趣旨を総合すれば、別紙目録記載の山林は明治二十五年三月当時の宮城大林区署所属営林主事渡辺弘が関係者立会のもとに本件係争地附近の官有地の境界を踏査して、これが境界を確定し、さらに明治三十六年四月宮城大林区署長は当時の国有林野法に基いて本件係争地の境界を査定し、本件係争地は官有地である旨の査定処分をなし、爾来昭和三十四年原告等が青森営林局に還付申請をなすまで何等の紛争もなく中新田営林署が植林し営理して来たことが認定できる。右認定を覆すべき証拠はない。大林区署長の官有地境界査定処分は官有地の境界を確定するのみでなくその境界によつて区分される官有地の区域を決定することを目的とする行政処分であつて、利害関係人から法定の期間内に訴願又は行政訴訟の提起があつて、裁決又は判決により取消されないで確定した場合は、本来民有地たるべくして官有地に編入された区域についても、民有地の所有権は消滅するものと解せられる。前記境界査定処分が裁判により取消されたことは原告等の主張しないところであるから、原告等はもはや本件係争地の所有権の帰属を争い得ないものといわねばならぬ。よつて原告等の本件請求は失当であるからこれを棄却すべく、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 秋山五郎)

目録<省略>

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